人気作家・二階堂紡季には、誰にも言えない秘密があった。
露呈すれば、すべてを失う。
しかし、その秘密と引き換えにしても、書かねばならない物語に出会ってしまい――。
装丁:小口翔平(tobufune)
装画:junaida
定価:1,815円(本体:1,650円)
このミステリには、物語の持つ願いと意義が描かれている。
国内外でブームの兆しを見せる〈〇〇〇ミステリ〉の、最先端にしてランドマークとなりえる物語。
法律家と本格ミステリ作家は、屁理屈を愛し、日々真剣に、屁理屈に向き合う仕事なのでしょう。
作家が「作家」を描くとき、そこには作者の小説観が滲み出る。これは、物語の力を信じる作者の決意表明だ。
「法律家」と「作家」、著者の二つの顏からイジメ問題に真摯に取り組んだ、大胆不敵な意欲作!
創作と現実を繋ぐ謎とそれを追う作家。魅力的な展開に最後までぐいぐい引っ張られる一気読みミステリ!
弁護士の手の届かない人を、物語が救うこともある。弁護士兼作家である著者の信じるものが垣間見えました。
あっという間に取りこぼされる世界で、誰もが着地の仕方を教えてほしい。この物語はその足がかりになるはずだ。
一介の作家として、ひどく胸が締め付けられた。ミステリを紡ぐ価値と、それを書き続けるべき理由とに。
この物語に出会えてよかった。五十嵐さんと同じ時代に生まれてよかった。紛れもない傑作です。
中盤に物語の焦点(フォーカス)が合ってからの興奮、そして一気読み……どうかこの計算され尽くした魔法を体験してほしい。
若手人気作家。28歳。愛煙家。ミステリの新人賞で大学時代にデビューし、以降コンスタントにヒット作を刊行している。生活能力は著しく低い。
弁護士。紡季の大学時代の後輩で、恋人。学校で生じる法律問題を専門的に扱う法律事務所で働いている。コミュニケーション能力が高い。
人気作家・二階堂紡季には、誰にも言えない秘密があった。
露呈すれば、すべてを失う。
しかし、その秘密と引き換えにしても、書かねばならない物語に出会ってしまい――。
装丁:小口翔平(tobufune)
装画:junaida
定価:1,815円(本体:1,650円)
……こんな残虐な話になる予定ではありませんでした。
成し遂げたいことがあるけれど、勇気が振り絞れない。そういった悩みを抱えている人は多くいると思います。原因が臆病に根差しているのなら、誰かに背中を押してもらえば前に進めるかもしれませんが、問題は〈犯罪〉を決断できずに悩んでいる場合です。
そんなときに、アルコールや薬物の力を借りて、目的を果たしてしまう人がいます。
またたびの力を借りてハムスターに襲いかかったネコのように。
さらに厄介なのは、アルコールや薬物によって、正常な判断能力を失っていた場合です。「責任なければ刑罰なし」という法諺が刑法に存在していて、責任能力が認められない状態でとった行動に対しては、原則として罪に問うことができません。
つまり、またたびで錯乱状態に陥ったネコがハムスターに襲いかかっても、罪に問うことはできないという結論が浮かび上がります。しかし、本当にそれでいいのでしょうか。
ネコは、ハムスターに襲いかかるという目的を最初から有しており、その勇気を振り絞るためにマタタビを嗅いで、目的通りの悲惨な結果を生じさせています。いわば、マタタビは、犯罪を遂行する道具として用いられたにすぎないわけです。
法律的な表現を用いると、「責任無能力状態を導いた原因行為時(マタタビ摂取)には、責任能力が認められて、その際の自由な意思決定(ハムスターに襲いかかる)が結果行為として実現した」ことになります。
こういった経過をたどっている場合には、例外的に完全な責任を問うことができる……。これが『原因において自由な行為』と呼ばれる法理論です。
原自行為とも略される法理論が、本作『原因において自由な物語』のタイトルのベースになっています。不合理な選択肢が浮かび上がって心を囚われ、悩みぬいた末に、外堀を固めて逃げ道を絶ってから、あたかもその行動しかとりえなかったように振る舞う。
『原因において自由な物語』の作中では、さまざまな『原因において自由な行為』が登場します。自分だったら踏み止まれたか、その行動に責任を問うことはできるか、どのような罰を科すべきか。登場人物と共に考えていただければ幸いです。
スマートウォッチで睡眠のトラッキングを始めたのですが、びっくりするほど睡眠の質が悪いらしく、ヘルスケアのアプリに怒られ続けています。これ以上怒られたくないので、二度寝をするときはスマートウォッチを外すようにしました(本末転倒)。
弁護士として働き始めて約半年。研修を経て、少しずつ事件に関わり始めた今日この頃です。弁護士の仕事も、作家と同じくらい、大量の文章を書き連ねます。今作成している書面が短編小説ほどの文字数に達していますが、最終的には中編小説くらいまで成長する見込みです。
かつてバブルの中心地だったらしい街に事務所があります。コロナ禍に突入してから上京したのですが、平時になったらどれくらいの人で溢れるのでしょうか。高級ランチ店を通り過ぎて、キッチンカー巡りを楽しんでいます。
事務所でも物語を創る仕事に関わっていて、法律漫画動画のシナリオを書いたりしています。急性アルコール中毒の危険性を調べたところ、テキーラ1本で500mlのビール12本分に相当するらしいです。テキーラ一気飲み、絶対ダメ。
カフェインの力を借りて、眠気に瞼が負けるまでパソコンと向き合います。休日で書き進めた分を、出勤日の夜に推敲するのが、最近の執筆サイクルです。脳を執筆モードに切り替えるまでに、1時間以上のユーチューブ巡りを要するのが悩みです。
眠気が限界突破したらベッドに向かいます。今日こそは、睡眠のトラッキングで高得点を記録する。そう意気込むほど、寝つきが悪くなります。
法律家を志した三人の若者。 一人は弁護士になり、一人は被告人になり、一人は命を失った──謎だけを残して。第62回メフィスト賞受賞作!
若き家庭裁判所調査官・瀬良真昼。どんな少年も見捨てない。そう決めて彼らと向き合ってきたはずだった。あの事件が起こるまでは――。
『幻告』
2021年10月リニューアル「メフィスト」にて連載予定!